未定2

机の上に乱雑に並べられた中華料理、それも、ハリウッドの中華街で買ったようなテイクアウトの紙袋に入った赤めの肉料理や茶色い海鮮、卵のスープ、それぞれが乱雑に、そのいくつかは傾いて中身が溢れている、八角の匂いと唐辛子と紹興酒、部屋の真ん中のピンポン台の上グラスに注がれたそれと時折入っているピンポン玉、どうやら自分が被っているのはカーテンのレース、それもビリビリに引き千切られて服飾学生の自己満足のファッションショーのよう、髪も前衛的な寝癖を鏡に映し、鏡の前に立つ自分の目は曇り虚ろ一体何日のあいだこうしてきた?全く覚えていないが彼女がいなくなってしまってからずっとこうだ、日々襲ってくる正気を酒の穴に落下して逃れながら、それでもものすごい速度で追ってくる正気は酒瓶をボウリングのピンのように倒す。

生きていることも死ぬことも、逃走する速度よりも幾分早く追いかけてくる、このノックの音は果たして夢か現か?玄関の扉を開けると男に無理やり扉をぐいと開けられ、脚を銃で撃ち抜かれる。

「俺を覚えているか」

あれは40年前のワルシャワか?独立に沸く上海の夢の中か?あるいは30年後、中国主席と面会した後のドラッグストアか?アメリカでドラァグ・クイーンと一晩を過ごしたあの夜のことか?一夜の夢は消えていく、あの頃とはいつだ。覚えているとは何か?これから犯す罪の償いを今求めるか?

心臓に二発、頭に一発、潰れていない左目にぼんやりと映るのは彼女の写真、忘れ得ぬ彼女の写真、私は覚えている…私は、彼女を覚えている…私が殺した彼女を覚えている…彼女の名前を覚えている…

男は銃口を口の中に突っ込み

「地獄でアリカに詫びるんだな」

そう言うと撃鉄を引いた。

 


太陽が眩し過ぎるという理由で日陰を探そう、と喫茶店に入りアイスカフェオレを二つ頼む、そこは真っ暗な照明で、赤いベルベットのカーテンに脚のところに裸の男性を象っている悪趣味な黒いソファ、テーブルはバスタブの上がガラス張りで中には小さい人形が薔薇の中こちらを向いている席で、昼間だろうがキスをしたり愛撫し合ったりしているカップルがおり、俺もまた若い編集者との打合せに多用しあわよくば情事の切欠を作ったりなど利用していた。